アカエリトリバネアゲハ
2009年10月初旬、タイの調査に休息を入れ、アカエリトリバネアゲハの写真撮りを目的にお隣のマレーシアへ
飛んだのです。35年前に一度当地のカメロンハイランド(標高1600m)へアカエリトリバネを採りにいったことがあり、其の時のアカエリトリバネに会った興奮が記憶に鮮やかに残っています。再会が楽しみです。
アカエリトリバネアゲハ
鱗翅(チョウ)目 アゲハチョウ科
棲息地 マレー半島、ボルネオ
学名 Trogonoptera brookiana
英名 Raja Brooke
初代サラワクの白人(英国人)のRaja(王)であったJames Brookeを記念しての名前である。
体長 約125〜145mm(羽を拡げた長さ)
この蝶は19世紀半ばに進化論で有名な、ウォーレス線のアルフレッド・ウォーレスによって最初に採集された。
ワシントン条約のII類にて保護されている。
今回は、カメロンハイランドへの拠点のThana Rataと言う小さな町にあるムスリム系ホテルに投宿することにしました。カメロンハイランドはタイのシルク王トンプソンの謎の失踪で一躍有名になったところです。これに加えMalysiaの国蝶アカエリトリバネの豊産地としてナチュラリストの間で垂涎の地となった訳です。
10月9日にはカメロンハイランドへ行き、バタフライガーデンで沢山のアカエリトリバネの写真を撮る事はできましたが、自然の中の姿ではなく、何んと言っても大自然の中の姿を撮らなくては意味無いのです。
Butterfly Gardenのアカエリトリバネの集団
Butterfly Gardenのアカエリトリバネ♂ Butterfly Gardenのアカエリトリバネ♀
カメロンハイランドへの街道には、点在する部落や観光スポットにはxxマイルと表示されています。
10月10日、心配していた天気は晴。9時チャターしたタクシーがやってきた。運ちゃんに、「Hot Spring」へと言いますがこの単語が理解できぬらしく伝わりません。とにかく出発。ホテルより20分のところに7マイル地点、リゾート地のような、人家が見え、谷に入る立派な道があり、多分此処だろうと運ちゃんを促し下る。すると運ちゃん此処なら知っているという口ぶり。看板に「KAULA W0H」とあります。T氏が計画書に書いてあるという。自分でたてた計画書ですが、恥ずかしながらというか、歳のせいか名前は忘れていた訳です。此処は温泉地で温泉が流れ出る川縁に、温泉のミネラルをもとめて沢山のアカエリトリバネアゲハが集まるという情報があったのです。
公園に着くと、林の中に広い駐車場があり、立派な茶店も、トイレもあります。先の川の週辺には、東屋もあり、テントサイトもあり整備された公園です。今回の旅の大きな目的「アカエリトリバネを撮りに行こう」の達成期待を胸に河原へ出陣です。
まだ時間早く、集団吸水は期待できないかと思いましたが、既に7・8頭のアカエリトリバネの♂が砂地に集まってきています(♀は不思議にも吸水に来ない)。三脚をセットし、魚眼を用意。I氏もヴィデオ準備。それぞれが思い思いの場所で、カメラを構えます。時間が経つとどんどん集まって、12・3頭の集団となります。何処が塒なのでしょうか名前の由来の如く、鳥の羽ばたきにも似て優雅に滑空し、前翅のグリーンの紋が目立っています。
この位の数の集団でも大型の個体なので迫力満点。朝の光を浴びて羽の緑が角度によって金緑色に輝きます。翅を拡げるまでは思い思いの方向と場所でダンスをしているが如く翅を立て、震わせ、吸水します。このとき胴体の部分が見られ紅色の自慢の襟と胸、羽の付け根の瑠璃色の鮮やかさ。落ち着き体勢が整うと一斉に同じ方向に向いて翅拡げます。調和の取れたスレンダーな姿。絨毯の絵柄模様のように美しい。この姿を見ると恍惚になる気分。どんな美人を前に置いてもこの自然が創りたもうた芸術品の集団にはかなわないというものです。
何ゆえに自然はかくもこのような姿を創造したのでしょうか、太陽に反射して翅の紋章は金緑に輝かせるのは天敵の鳥に対する目くらましなのでしょうか、自分は毒を持っている(幼虫時の食草は毒のあるウマノスズクサ類)とのアピールなのでしょうか、はたまた雌を引き寄せる化粧なのでありましょうか。
余計な事は考えるの止めましょう。ファインダーを覗いていると、時間を忘れる。幸せな時間を満喫したのです。
View of T. brookiana アカエリトリバネのいる風景
Dancing of T. brookiana アカエリトリバネのダンス
Red neck of T. brookiana お洒落なアカエリ
Rerax of T. brookiana リラクッスして吸水に夢中
Best shot ナイスショット
つり橋を渡って川向こうのジャングルに行ってみます。正にジャングルで鬱蒼としている中に細いトレッキング道が造られています。林は木が密集して侵入者を拒んでいるようです。
空間のある林なら日溜りがあり、蝶が集まるのですがこれでは無理。暗がりが好きなせいぜいワモンチョウ類か、ジャノメチョウ類位でしょう。森林性のシジミチョウもどうやら期待できそうもありません。木はブナ科の木は無いようです。日溜りはこの細い路だけ。足元からワモンチョウが飛び出す。コウモリワモンが日向ぼっこしていたみたいで、あっという間にジャングルに潜って、こちらは手も出ません。大きなツバメガが飛び出したくらいであとは何も見えず、時期が悪いのかもしれません。
ジャングルを一周りし、ジャングルへの入り口で、廣場になっている場所に、大きな別荘があり、その裏手に行ってみます。裏は竹林になっており、この林縁をアカエリトリバネが蝶道を作って飛んでいます。5・6分間隔でやってくる、ここにくるものは5・6頭でしょうか。優雅に滑空してくる。緑が目立ち美しい。良い環境の割りにはアカエリトリバネ以外の蝶は少なく、この時期が端境期である事を、ものがたっています。つり橋を渡っていると、先ほどは2箇所のポイントしか集団が見られなかったが、この橋から下を見るとゴロタの河原のあちこちの白い石の間の水溜りに3・4頭の小集団の吸水が見られます。石の間に見えるチョウの金緑の紋の輝きはプラチナの台座にはめ込まれたエネラルドの如く、まばゆい光を放って居り、河原の砂地に見るのと違った雰囲気をかもしだしております。
意外と広い範囲にこの風景が展開されるのです。なんという至福の一時でしょうか。
時間と場所によっては30頭〜50頭の大集団に会うこともあります。こんなときは体中が振るえ呆然とするだけです。
虫の嫌いな人でもこの集団を目の当たりにすると興奮間違いないでありましょう。大自然に乾杯。
とりあえず今回の目的は達成されましたが、写真の撮影技術の未熟さの為、魚眼レンズでの撮影に満足ゆくものなく、いつか又の再チャレンジを密かに決めるのでした。